審査委員長
しりあがり寿先生
【ジュニア部門】今回はご応募の地域も増え、テーマの見方にも広がりがみえている感じがします。テレビでみるヒーローだけではなく家族やいろいろなところで、これもヒーローなんだというようにヒーローへの見方が広がっていました。とくにジュニア部門では自由に、身近なところからヒーローが出てきているところが楽しかったです。
『お地ぞうさんはヒーロー?!』ふっくん
小学校2年生とは思えない迫力のある絵で、画面に力があり、色の使い方も上手だと思います。ネタもマラソンと宿題というふたつにそれぞれオチをつけて、2つ目のオチを大きくして締めるという構造がしっかりしています。とても将来が楽しみですね。発想の中でお地蔵さんが自然に出てくるところが興味深かったです。
『体に元気を!! ビタミンレンジャーズ』ちゃーペン丸
画面のきれいさに圧倒されました。これは色鉛筆ですかね。見ただけで、ストーリーを読む前に気分がほんわかするような作品です。内容も身近なところで、自分の体を作ってくれる、自分の健康のために貢献してくれる野菜をヒーローに仕立てているところは、自分を助けてくれる価値のあるものをちゃんと考えているんだなあという気がして、とてもよかったと思います。
『たすけてくれるスーパーヒーロー』へんみれん
投稿者が保育園でびっくりです。しかも内容がテレビなどの悪者を倒すヒーローという既成のイメージにとらわれず、本当に自分を楽しくさせてくれる人がヒーローだという素直な気持ちがそのまま出ていて、とてもよいのではないですかね。最後のブランコに乗っていて楽しいという顔は最高でした。
【一般部門】一般部門の方もいろいろな地域から送っていただきました。なおかつ常連さんもついてきていて、お蔭様でレベルの高さをキープしています。常連さんが頑張る、その中で新しい方々がそれを越えていくというダイナミックで緊張感があるコンペだったと思います。
『笑顔のために』月島ももか
定点カメラから4コマをただ撮っただけという、画面が動かないというシンプルな構造なのですけれども、その中で非常に深いところ、ヒーローはひとりじゃないよとか、だけど褒められるのはその中の一人?とか、いろんな意味で深さをかんじさせる内容をシンプルな構造で描いています。
『クリーンマン』ハッピ~らんど
今回もまずはかわいい絵ですね。かわいい絵が目を引いて魅力的です。今回のストーリーは実話なのかわかりませんけれども、おふたりで子育てをしている中での何気ない一瞬、そこに家族の愛を感じさせます。ヒーローを上手に素材にしながら、子育ての楽しさや家族のあたたかさを感じさせてくれる作品だったと思います。
『ボクのヒーロー』のざきしょーいち
のざきさんは今回もマンガを描く側の視点から描いてくれました。何よりもヒーローということをテーマから、自分がヒーローではないからこそマンガでそれを実現するんだよという、最後のコマですべてのマンガ家をハッとさせるようなオチをつくってくれて、確かにそうなのだよなと、目が覚めるというか、納得の一コマだと思います。
中野晴行審査員
『危機一髪??』緑塚富士丸
小学校6年生なのに、危機一髪という漢字を間違っていない。私が小学生のときは「一発」と書いたと思うのにえらいと思いました。スーパーマンが来てくれたはいいが、お風呂に入っていたのでパンツをはいていないという下ネタのオチは大好きなのでよいと思います。昔、地球防衛軍という東宝の特撮で、向こう側から巨大ロボットがきているのに、女の人がお風呂に入っているというシーンを思い出した。豊島区の方が多い中で他地域から応募してくださっているところもうれしいと思いました。
『ヒーローになる夢』るいるい
ヒーローがすきでヒーローになる夢を持っていた子が最後はお医者さんになるという夢に変わっていく。中学1年生なので将来のことを考えているな、ということがよくわかります。そして、ちゃんと「起承転結」になっていますね。ひとコマ目、ふたコマ目で「起」「承」、「でも」で「転」といって、よんコマ目で「結」になっています。今どき、起承転結を知っている人はいないと思っていたので驚きました。
『タコのヒロベエ!!』平塚こたつ
一番最後のコマにカタカナで「タコ犠牲」と書いてあるところを「他己犠牲(タコギセイ)」と漢字でルビをふってもらうと、この洒落がよくわかってよいのにもったいないという気がしました。足を1本食べてもらったので、8本であるところを7本にしてあったり、絵でみせるところが細かくできていました。アンパンマンのタコバージョンかな。絵がかわいいのが好きです。これからはネームの使い方の細かいところなどから気を使って丁寧にされるとおもろくなると思います。
『行け!猫まんまん』高台県一
正義のヒーローが実は仕事がなくて、家でゴロゴロしている。ヒーローとしては働いているのだけれども、家にいるときはゴロゴロしているので、お母さんが心配している。お母さんからニート扱いされていて、「自分の将来が不安になります」というオチがブラックで、スパイダーマンを思わせるような展開でよいと思いました。カラーの使い方がとてもきれいで最後は暗いシーン、黒バックで猫の顔が描かれているところはうまいと思いました。
山内康裕審査員
『ボクだけのヒーロー』はるたなつき
ママとパパが休んでいて、お子さんが幸せと思う作品なのですが、親の願望が表れている作品だと思っています。子どもたちの前では両親ともにヒーローでありたいけれども、土日は休みたい中で子どもがそれでも幸せと言ってくれるとうれしいな、という子育ての気持ちが表れていると思ったので選ばせていただきました。
『みんながヒーロー』岩本しんじ
ヒーローの絵の造形も味があってすばらしく、見やすい作品となっています。今回はセリフが多かったので、4コママンガなのでもうすこしセリフをコンパクトにした方が、より見やすさも上がると思います。展開も含めて、みんなの心の中にヒーローはいて、そうなっちゃうとヒーローをやっつける人はいなくなっちゃうよというように子どもに問い詰められるところとか、うまく起承転結になっていてよい作品だと思いました。
『いつのまにかヒーロー』ユリアンティーリズム
足についているアリが家族のもとに帰っていたという話。観察眼の鋭さを感じます。自分の足についていたアリをみんなのもとに返してあげたいというやさしさがあり、結果的に自分がヒーローになっていたかもしれないという想像を働かせて描いた作品にみえます。そういう意味で身近な気付きから想像力を膨らましてヒーローだったかもしれないというストーリーを作っているので、あたたかい気持ちになってよい作品であると思いました。
『ヘボ仮面』中鳥太郎
中鳥さんはとてもたくさん作品を応募してくださっていて、マンガがすきなことがわかるような、四コママンガをよく読んでいるような形での起承転結を意識しながら描かれています。クラスの中でみんなに見せるマンガを描くことが得意な子だという気がしましたし、マンガすきということが伝わってきたので、今後もどんどんマンガを描いてほしいと思いました。
小出ミキオ審査員
『守る人』喜久山 悟
絵が上手なのはもちろん、起承転結もはっきりしていて、とくにモッブシーンの感じや、浮浪者風の人がヒーローだったという逆転オチもうまくできていて完成度の高さに感動しました。
『家族のかたち』るりまゆ
設定の家族構成が私とまったく同じ!最後のオチにお母さんのよろこんでいる顔があり、すごく構成もよいし、吹き出しもないのにまとまっていてすばらしい作品だと思いました。るりまゆさんがこの家族のどなたなのかを想像して暖かい気持ちになりました。
野々部利弘審査員
『小さなヒーロー』みかん
実際に経験されてことを表現されたのでしょうか?明るい色彩で、言葉の表現はありませんが、優しい雰囲気が伝わる絵です。身近な日常生活の中にちょっとした親切や優しさで自分自身が、ヒーローになれることを感じさせてくれる素敵な作品でした。その優しさを受けた方もハッピーになります。これから大人になっても、そんな美しい心を、いつまでも持ち続けてくださいね。
『ボクはヒーロー!』うううききき
北海道という遠い場所からの応募ありがとうございます。ひとつひとつの制作過程が慣れている作品で、とても安心感がありました。最後4コマ目の「ヒーローが疲労」というオチは、ちょっと「さむいギャグ」ですが、4コママンガの王道のスタイルで、とても納得感があり、思わず笑ってしまいナイスでした。これからも「疲労」しないようにマンガ道のヒーローとして頑張って下さい。