審査委員長
しりあがり寿先生
『トキワ荘のまち 4コマまんが大賞」は、今回で2回目になりますが、1回目に比べてレベルが上がったように思います。そのせいで非常にずば抜けた作品から選ぶというわけではなく、迷いながらの選考でした。ほっとする作品から驚かせる作品まで、しっかり描いたものから雰囲気で見せてくれるものまで、バラエティに富んでいました。応募してくださった方も、一般の方からセミプロの方まで、広がっていると感じます。
その中で、大賞に選ばれたのは、見たことがないようなアイデアで驚かせるわけではなく、超絶テクニックで描いているわけでもなく、自分の考えたこと、考えた未来を素直に書くことで、人の共感を得た2作品が選ばれたと思います。4コママンガが、少なくとも、プロやアマチュア、子供大人の区別なく、みんなが自然に自分の気持ちを残すことができる、そういう身近にある表現の手段として定着しているんだと嬉しく思いました。
『次世代ロボ』
すごいロボットが発売されるという架空の状況を、しっかりとディティールまで描き込んでいる点が素晴らしい。「2130年の発売」や「定価30100円」など、ディティールがしっかり描きこまれているので、「本当にこれはどうなるんだろう?」「いくらぐらいでいつ頃できるんだろう」と、読んだ人が想像を膨らませて考えることができる。ただ面白いだけじゃなくて、そこから未来を考えるきっかけになる、いい作品だと思いました。
『みらいのくれよん』
この作品のすごい点は、とてもよく状況が伝わってくること。くれよんで描いて花が出てくる。シンプルな絵ですが、ストレスなくしっかりと内容が伝わってくる。まあ、何が起こっているのか、何が書かれているのかだけではなく、大切な気持ちが最後に伝わってきます。かきとらさんに自分の気持ちを重ねていると思うのですが、作者の喜んだ気持ちが伝わってきます。シンプルな絵でしっかりと気持ちや何が起こったかを表現された作品です。
『明日の風』
心配や不安はいろいろありますよね。それが風が吹いて飛んでいってしまった後に、明日は明日の風が吹くと、すっきりとした表情で伝えている。今、とても多くの人がこういう気持ちでいると思います。そうした人の共感を得て、その人たちをほっとさせてあげる。悩まなくていいんだよという気持ちを、たった4つのコマで、たくさんの人をほっとさせてあげられる力があると思いました。
中野晴行審査員
『ついに夢の実現!?』
ゆるい絵柄から始まり、4コマ目はドアップで絵も変わってリアルな劇画に。見せ方がうまいです。作品を描いた子は、「宿題が大っ嫌いなんだろうな」と感じ取れるほど、描き手の気持ちが伝わってくる作品です。
『犬の時代系列』
犬が人間とどう関わってきて、進化してどうなっていくのか。「未来」と聞いて、これが描けるアイデアが面白いですね。「20xx年」だと、あと88年しか残されていないので、残りの年で実現するのかは気になります(笑)。
『時空さんぽ』
実際に未来にいくのではなく、未来に行ったつもりになって街を歩くという発想がとても面白かったです。文章での説明が多いのは少し勿体無いところ。最後はうどんではなく、トキワ荘通りの「松葉」のラーメンを食べて欲しかったですね(笑)。
山内康裕審査員
『みらいのくれよん』
小学校1年生でこれほど描けるのはすごい。くれよんでかいたものが実際に飛び出すという展開に子供にとっての純粋な夢を感じて、幸せな気持ちになりました。そんな未来がくると嬉しいですね。大賞にふさわしい夢と未来が現れていると思います。
『作り出す未来』
作者は漫画が好きなんだろうなと感じる作品でした。描いてあるタイムマシンも可愛らしくていいですね。「未来は自分で作るものだ」という自分の意志みたいなものが表れているいい作品だと思います。
『地球温暖化』
伝わりやすい4コママンガだと思いました。未来を警鐘するのは今回よく描かれたテーマ。ネガティブな部分もありますが、それを感じさせないようなコミカルな絵柄と展開で、はっとしながらもほっとする作品です。
『2xxx年8月29日』
1コマめの胸のポケットが電源チャージだったという伏線、色遣いの巧みさ、4コマにわたってのキャラの構図、どれをとっても4コママンガとして秀逸な作品だと思います。
『人口』
ちょっと先の未来、すごく先の未来と展開する時間軸を使った4コマ作品。キャラクターの配置の展開がわかりやすく、ディストピア設定ですが楽しく読める絵柄とテンポになっているところが素晴らしいです。
小出ミキオ審査員
『明日の風』
ビジュアルがはっきりしていてインパクトがあります。ストーリーも簡潔です。「明日は明日の風が吹く」という決め台詞が、藤子 不二雄A先生のマンガちっくで、好きだなと感じました。
『みんなのみらい』
「お年寄りを大事にしよう」というのは社会全体の問題ですね。お年寄りのやる気を感じさせる作品でした。絵も美しいです。
『海の未来は?』
入賞した中では唯一の中学生の作品です。見ているだけで癒される美しい絵ですね。社会的なテーマを描いた点もいいと思いました。
野々部利弘審査員
『わたしのみらい』
自分の未来を、素直に欲のない方法で表現したマンガです。とても心の美しい作品に我が身を振り返ることができました。
『未来のごはん』
「未来」は、いろいろなことがたくさんあって難しいことを考えがちです。しかしその中で、自分の手元が、まったくできていなかったというオチに思わず笑えました。
『明日の風』
人生は、悩み迷うこともたくさんあるけれど、「まぁ、いっか~」と悟ったかのように、「苦も楽しみ」と思えて心の底から笑うことができれば大抵の問題は解決するのかな?という暖かい気持ちになりました。