●昭和な雰囲気を出すためにアナログなやり方で製作しました
ーー 向坂さんはトキワ荘マンガミュージアムでアルバイトをしていた頃にグルメマップを作られたそうですが、どういった経緯だったのでしょう。
向坂歩佳さん(以下、向坂) 美術専門学校在学中にアルバイトをしていて、としま未来文化財団からマップ制作の依頼をいただいたんです。当時、銅版画科だったので、その意味でも声をかけてもらったんだと思います。
ーー そうだったんですね。財団さんからマップの内容に要望はありましたか? お店のセレクトはされていたのでしょうか。
向坂 はい、お店は財団さんに選んでいただきました。当時、依頼されて絵を描くのは初めてだったので、最終稿でもけっこう試行錯誤しました。昭和な雰囲気を出したかったので、それぞれイラストを描いて、貼り合わせて、すごくアナログなやり方で制作しました。好評っていうのは今回初めて聞いたので、うれしいです。
ーー このマップの懐かしい雰囲気が、トキワ荘マンガミュージアムで展示している昭和のイメージとぴったりと感じています。ところで、平成生まれの向坂さんが「トキワ荘」を知ったきっかけは何でしたか?
向坂 私は手塚治虫が好きで、そこからトキワ荘を知りました。
ーー 手塚治虫はどうして?
向坂 最初はアニメの『火の鳥』で知ったんです。たまたま、主人公が好きな女性がゲル状に溶ける表現を見て、びっくりして。その後、もう少し大きくなってから漫画も読んで。『どろろ』もアニメから入って漫画を読みました。途中で終わってしまっていて残念でしたが、手塚作品では、歴史系の内容が好きです。
●今の漫画・アニメカルチャーの原点として親しんでほしい
ーー やっぱり、手塚作品は時代を超えて影響を与えているんですね。では、話をグルメマップに戻して......これはどんな人に見てもらいたいですか?
向坂 トキワ荘で働いている時にも幅広い世代が来館されるのを見ていたので、年齢世代を問わず手にとってほしいですね。
ーー 「トキワ荘が本当に、若い人に伝わっているのか?」と、いつも考えていますが、この辺りはどう感じていますか?
向坂 トキワ荘でバイトしていた頃も、「若い世代は知らないんじゃないか」という話は耳にしていました(笑)。でも、実際に来館者を見ていると、家族連れや小中高生も多いですよ。企画が色々と変わるので、それがフックになっていろんな世代に伝わっているんじゃないかと思います。
ーー そう言ってもらえるとうれしい限りです。
向坂 現在は、日本のマンガ/アニメカルチャーが盛り上がってると言われて、新しい作品もたくさん生まれているし、色んな世代が見ていますが、一方で、その原点を知る機会はあまりないと思っていて。そのタッチポイントとして、トキワ荘はすごくいいと思います。
だから、トキワ荘で当時のマンガのことを知ってもらって、グルメマップのお店にも立ち寄ってもらって、時代の空気感も感じてもらえたらうれしいです。私自身もそうですが、実際に昭和を生きていない世代にも味わってほしいなと思います。
プロフィール
向坂歩佳(むこうさか・あゆか)